次世代ステンレスネット〈ゼノックス〉開発ストーリー
目指したのは“オンリーワン”ではなく“ベストワン”。
被覆タイプから始まった職人とワイヤーとの闘い
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究極の耐食性をもとめ
ステンレスワイヤー製ネットのプロジェクトが始動当社の主軸である防鳥対策の現場では、かねてより“樹脂製のように扱いやすく、何十年ももつ耐食性と、耐火性があるネットがほしい”というニーズが根強くあ
りました。
そこでステンレスワイヤーでネットをつくれないかと、それまでの常識を超えた
プロジェクトが立ち上がります。
実現の可能性は決して高くありません。
そして開発現場の苦悩の歴史はここから始まります。 -
数々の障壁、失敗、挫折を乗り越え
ついに被覆タイプのステンレスワイヤーネットが完成。この難題を引き受けてもらったのが
日本屈指の極細ワイヤーメーカー《日本ミニチュアロープ株式会社》と
有結節技術で高評を仰ぐ漁網メーカー《岡本漁網株式会社》。
樹脂と大きく異なる特性のステンレスワイヤーを編むには、ワイヤーのヨリ線そ
のものからの見直しや、編網機の大幅なカスタマイズが必要です。
失敗が続き、一時は不可能と判断をせざるを得ない状況になったことも。
それでも理想のネットを編むことへの職人魂は冷めることなく、約2年の歳月を
経てナイロン被覆タイプの《ステンレス トリカットネット》が完成しました。 -
リニアモーターカー見学施設など
防鳥以外の分野でも導入が進む無事完成した《ステンレス トリカットネット》ですが
例のない仕様で、価格も通常ネットのよりはるかに高価だったため
反響や問合せこそ多くても、当初はさほど導入は進みませんでした。
しかし地道なPRと導入実績を重ねていくうちに、徐々に採用も増加。
独自の高級感ある質感も評価され、内装やインテリア、壁面緑化、動物園、水族
館など、防鳥以外の分野での導入も増え始めます。 -
ステンレスネットは防鳥分野のカテゴリーに成長。
ゴミ処理施設の塔屋部などでは定番化他社からはワイヤーをスリーブで結束させたネットが発売されるなど
耐食性のあるステンレスネットはひとつの製品カテゴリーと成長していきます。
それでも軽量で、価格も安く、小さい目合いに対応した
《ステンレス トリカットネット》の優位性は不動の地位を守っています。
高温に達するゴミ処理施設の屋上棟屋部などでは、定番化するまでになりました。 -
新国立競技場軒下の鳥害対策として
約10,000㎡が採用される商業ビル、マンション、駅舎、高架橋、倉庫、飛行場、工場、動植物園、緑化など
数多くの施設や環境で導入されてきましたが
隈研吾建築都市設計事務所設計の新国立競技場への採用は、規模、知名度と
もに《ステンレス トリカットネット》最大の実績となりました。
世界的に誇るこの建造物に大量に導入された事実は、多大な苦労を経て完成
させてくれた現場の職人さんの苦労に報えた瞬間でもありました。 -
そして次なる挑戦は
超難問であった裸線タイプの実現に向けて以前より被覆のない裸線タイプへのニーズもあり、私たちはその方法を長年模
索していました。
被覆は内部のワイヤーを守り、編網しやすくなる
重要な要素なだけに、裸線タイプの実現はまさに難問でした。
“ワイヤーをそのまま編む”、“編んだ後に被覆を除去する”など、様々な方法を検
討し試してきましたが、どれも現実的ではありませんでした。
再び訪れた苦悩の日々でしたが、ある伝統技術を応用することでブレイクスル
ーに至ります。 -
日本の伝統技術をヒントに思考錯誤を経て
ついに試作に成功。2つ特許も取得ヒントになったのは、古来より装飾などに用いられる日本の伝統技術『組み紐』。
この技を応用、さらに転化し、後に除去する特殊な方法を見出しました。
被覆が変わることで、編網も大幅に見直しが必要となりましたが、
トライ&エラーを繰り返しながら、ついに極細ワイヤーで試作が成功します。
この編網と原糸加工において特許も取得。
そして用途の幅が広がる太い線径への挑戦へ続くことになります。 -
線径によって大きく変わる製造課題をクリアし
汎用性の高い0.45と1.0を発売開始!線径が変わると求められる技術も大きく変化します。
細いワイヤー用の技術そのままでは失敗します。
膨大なデータを取りながらも、最後に頼りになるのは職人の感覚と技。
機械が発する情報を五感で感じ取り、微細に調整することで
無事、線径0.45㎜と1.0㎜が完成、1.5㎜の試作にも成功しました。
スリーブ結節タイプに比べ、大幅に低いコストで提供が可能に。
“最高のものを作る”との決意から遂に誕生した新ステンレスネット。
ZETA(最高)、KNOT(編む)、X(交差)を由来に
ブランド名を『ZENOX/ゼノックス』としました。